
先日、シドニーの中心部からもほど近い、市民の憩いの場であり人気観光地でもある「ボンダイビーチ」で銃撃テロ事件が起きました。まだ幼い少女を含む15名(2025年12月18日現在)の尊い命が失われ、多くの市民や観光客の方々が巻き込まれた凄惨な事件でした。銃撃テロを起こした親子の父親は警察に射殺され、息子は重体のまま病院に運ばれたのち昏睡状態からは脱しましたが、事件の解明には時間がかかりそうです。
オージーたちにとってのボンダイビーチは、ワンちゃんと一緒に散歩をしたり、友人とビーチ沿いのカフェでのんびりしたり、小さい頃から泳いだりサーフィンをしたりライフセービングを学んだりしてきたような、とても身近で自慢の美しいビーチ。彼らにとってもかなりショックが大きい事件だったようです。「銃撃テロが起きた場所」としてこれから認識されていくボンダイビーチは、もう以前の在り方には戻らないのですから。
この日はどの媒体でもこのニュースのアップデートが続き、次々とほの暗い背景が明らかになっていきました。反ユダヤ、イスラム、移民、ISIS……ここ数年世界中でネガティブな話題を提供し続けているトピックが全て含まれているようで、「Breaking」と新しい情報が出るたびに、何か原油のような粘り気のあるイヤーな感じの液体の中にはまって足が動かせなくなるような、そんな感覚に陥りました。
このままだと自分の心が重い闇に囚われそうだったので、まだ判断力のあるうちに自分からは情報を検索しないと決めました。
インドネシアに住んだことのある身としては、ムスリムの人たちの印象がどんどん悪くなっていくことには悲しさを覚えます。何ごとも、主語を大きくして決めつけたり、ひとくくりにカテゴライズしたりしてはいけない。それを今一度自分に言い聞かせています。

最近ではオーストラリアでも「移民を受け入れるな」というデモが起こったり、永住権やパートナービザ、学生ビザの更新すらも難しくなったり費用が高くなったりしています。そもそもオーストラリアという国においてはアボリジナルの人々のようなネイティブ以外は全員移民なのですが、長く白豪主義だったこともあり、根本的に白人以外は「移民」「外国人」というカテゴリーで見られるのでしょうか。
それでも、シドニーではヨーロッパを旅したときほど差別を感じていません。ヨーロッパ某国のホテルで、アジア人だけ朝食場所が窓のない場所に隔離されるという経験をした私からすると、時々明らかにアジア人に対して雑な接客をするウェイターがいたりするのは事実でも「悔しい」という感情を持つほどではありません。アジア人の移民が多いことも影響しているでしょうが、これまでは主に白人のオーストラリア人が移民に対してそれほど抵抗感を持っていなかったからではと思います。しかし、この1年で急激にその価値観が失われつつあると感じています。
世界には様々な国があり、人がいて、文化が違えば価値観も違う、それでも互いにそれを認め合って生きていく。大それた物言いかも知れませんが、それが平穏に共生していく唯一の道だと思うのです。
そのためには「知ること」はとても大切なアクションです。相手を批判するのは、「知らない恐怖」からだとよく言われます。特に日本は海に囲まれた島国で、陸で国境に接したことがほぼありません。安全な反面、自ら外に出ていかないと異文化を体感できないのはネガティブなポイントです。
できるだけ多くの日本の人に異文化に触れてほしい、今私は心からそう思います。近場への旅行でいい、高いツアーでなくても格安航空券での移動でいい、もしくは日本に旅行に来た外国人と話すだけでもいい、それでも良いから。異文化に触れることで知見が広がり、人に触れることで心が柔らかくなります。「知らない恐怖」で攻撃的になる前に、一度外に触れてほしい。偏ったテレビの報道やウェブ上の情報でなく、自分の目と耳、感覚で捉えたものを信じてほしい。
それがこれからの世界では本当に大切なことだと思うから。
それから、実は私は来年はじめに帰国することが決まっています。
本来はもう少し長くいる予定でした。だから少しだけ悲しい。シドニーに来るために諦めたことがたくさんあったから、たくさん思い悩んで決めたのにこんなに短い滞在になるとは、と思うのは正直なところ。それでも、この経験は貴重で、シドニーに来ることは一度きりの人生の中でもきっと一番良かったと思える決断でした。辛いことや悲しいこともたくさんありましたが、新しい経験や自分の中で磨かれた感覚はそれを上回るほど多くあり、総じてプラスだったのではと思っています。
あと少し、多分人生最後の長旅を全力で楽しんでいけたらと思っています。
相変わらず不定期更新のBlogです。記事風のBlogは毎回きちんと背景を調べるようにしたことで時間はかかりますが自分にもとても勉強になっています。自分が納得できることを自分のペースでうっすらとでも続けていける、アップデートし続けられていること、これほど嬉しいことはありません。何より自分が楽しいですし。
雑日記は情報ではなく、いわゆる「ひとりごと」。これは本来心の中にしまうべきものかも知れない。けれどこうして頭の中で考えたことを文字にすると、スッと整理されていく感覚があるのです。
誰が読むのかこの弱小Blog、もはやオワコンとも言えるテキストサイト……それでも私は文章が好きです。
愛着がもてる自分のサイトをゆっくり育てていきたく思います。

