あ・え・い・う・え・お・あ・お!
密かに、どころかかなり楽しみにしていた、舞台『ハリーポッターと呪いの子』。
ブームには遅れることにしている筆者ですが(そうなの)、2022年6月の初演から2年経ってもなお健在の人気ぶりに圧倒されました。
薄い観劇レポートです。
※舞台に詳しいわけでもない筆者の主観によるレポートです。温かい目でお読みいただけますと幸いです。
▼舞台の予習中ポチッてしまった話はこちら。
久しぶりすぎる赤坂
舞台『ハリーポッターと呪いの子』は赤坂ACTシアターで催されています。様々な舞台公演が行われてきた劇場ですが、2022年からは完全に舞台ハリポタの専用劇場になっているようです。
にしても「赤坂」って、東京にいても遊びに行く場所の第1候補としてはなかなか挙がらない所と言いますか。新年には企業の皆皆様が列をなして参拝することで有名な、ばかでかい鳥居とエスカレーター付き参道が仰々しい(失礼しました)日枝神社もありますが、筆者も仕事以外で行ったことはな……担々麺を食べに訪れた以外はありませんでした。
ええ、希須林の排骨担々麺は非常に魅力的です。カロリーなど気にしてられない危険なおいしさですが、よければぜひ。
赤坂サカスもハリポタ仕様
東京メトロ千代田線赤坂駅からACTシアターに向かう出口はいくつかありますが、どの出口もハリポタ仕様の仕掛けが。ここをローブを着たポッタリアンの皆様が歩いている景色は、なかなか雰囲気出てます。
ACTシアターがある赤坂サカスの一部はハリポタ関連のグッズストアやカフェになっています。オープン直後は人気すぎて入場制限もかかったと聞いていたので、舞台の始まる前なら空いてるかなと思って行ったら甘かった!週末だったこともあると思いますが、グッズショップは満員電車くらいの密度だったためチラ見して退散。ちなみに、観劇後の方が入場者数をコントロールしてくれているので快適にお買い物できます。
タイムターナーモチーフのペンダントや、デザインカードなども凝っていて可愛かったですし、少なめではありますがもちろん各寮グッズもありました。
カフェもオープン直後から列ができていました。昼の部(12:15開演)はお茶をしていたら間に合わないので断念。多分夜の部の方がゆっくりランチをしにきたのかなと想像しますが、メニューはお子様が喜びそうだし、大人だけでも楽しめそうな雰囲気です。またいつか。
薄ーい舞台観劇歴とハリポタ歴
日本語ミュージカルは苦手分野
筆者は本当に失礼なことに劇団四季の『CATS』ですら途中で眠気に襲われたくらい「ミュージカル」は得意ではありませんでした。が、ドラマ『glee』にハマってからは、”英語”ならむしろ楽しんで観られるようになりました。メイン曲から入った『Wicked』や『RENT』などの有名作品は、ミーハー根性でロンドンやNYで観たことがあります。演劇は、これまた三谷作品や劇団☆新感線などの有名どころであれば経験あり。レポート書きのために観た歌舞伎や能は、勉強してから何度か観に行きましたが、深くまでは理解できていないにわか止まりです。
ハリポタは原作好き
ハリーポッターは、学生の終わりくらいに話題になったシリーズ。もともとファンタジー好きの筆者でしたので、読み始めたらもう止まらなくなってしまい、お子様たちに混じって新刊が出るのをワクワク楽しみにしていました。映画化した時も、想像していた自分のハリーの世界と答え合わせをする気持ちで観ました。映画『ハリーポッターと死の秘宝part2』が公開された時はもう良い大人でしたが、もう最後まで見守る、見守らなければという半ば義務感に似た感情で映画館に行ったことを覚えています。
つまり、「ハリーポッターシリーズは好き」だけど「舞台は多少経験があるにわか」の筆者。演劇作品は比較的興味を持って観られるものの、「英語原作作品の日本語版ミュージカル」に感じる違和感が少々苦手。今回も英語原作舞台の日本語版なので、内心楽しめるのか…不安な気持ちでいっぱいでした。
観劇レポート
とまあ、色々と心配していたのですが、開幕したらもう何も問題ありませんでした。オチがなくて申し訳ないくらい。
苦手意識を持ったにわかでも楽しめた理由としては、まず「ストーリーがシンプル」であることが大きいと思います。事前情報として、とりあえず『ハリーポッターと炎のゴブレット』は復習しておくと入り込めると聞いていたのですが、それもかなり役立ちました。少し怖くもあり、悲しくもあり。ハリーのつらさも、子どもたちの悩みも理解できたし、ぐっとくる場面が何度もありました。
ただ、注意が一点。ストーリーはシンプルと書きましたが、大人には、と付け加えておきます。特に序盤はテンポも早くて演出もアーティスティックな部分があるので、もしかしたら小学生くらいのお子様には理解が難しいかも。他の要素が楽しいので問題ないかもしれないですけどね。
次に、キャストの動きが大きくてキレがあるので、遠くからでもわかりやすかったことも一つあります。ローブやマントを翻す動きや、動く大階段で高さや奥行きも感じさせるのはさすがと言ったところ。
そして何より、魔法の演出と小道具・大道具を様々な物に見立てる演出、ライティングに大大大拍手。想像力が掻き立てられて、とっても良かった。
闇を引き立てるスポットの使い方や、最後のシーンの夕方っぽいライティングには感動すら覚えました(そこか)。
舞台装置に興味津々
2階席の真ん中だったのでキャストの細かい表情までは見えませんでしたが、その代わり全体がよく見渡せました。ACTシアターの2階席は結構傾斜があるので観やすいのかも。
攻撃魔法の炎や光を使った派手めな演出はもちろんのこと、ポリジュース薬や変身術の仕掛けにも、舞台上の「ターンテーブル」や「せり」がうまく使われていて、「お!今のどうやったんだろう」と興味を持たせるにくい演出も。
舞台裏ツアーがあったら仕掛けを見てみたい!と思うくらい気になりました。
キャストたちに盛大な拍手を
それにしても、やはり演者さんです。
筆者が観に行った回のハリー役は、ミュージカルやTVドラマでも活躍中の大貫勇輔さん。舞台映えする立ち姿と声の通り具合、キレのある体のさばき方が素晴らしかったです。他の有名どころだと、ロン役には最近のミステリー界隈で「配役されただけで犯人だと分かる」で有名な迫田孝也さん。ロンらしいコミカルな場面を担って、シリアスな場面が多い物語の中のオアシス的な味を出してました。
個人的には、嘆きのマートル役の佐竹桃子さんに感激。原作や映画では縦横無尽に飛び回っているユーレイなのでどう表現するのかなと思っていましたが、心配無用でした。声も研究されているのか、全身が大変キュートで目が離せませんでした。きゅん。
大事なのはそう、滑舌とキレ
前述したように、全体的にストーリーの進み具合は早い方。大事な場面は丁寧に時間を取っていますが、物語の冒頭で息子たちがホグワーツに入学してから4年生になるまでの早いこと早いこと。ハリーのセリフも相当早口。この場面のセリフは噛めないし、滑舌が良くないとお客さんに届かないし理解できない。大貫さんの滑舌の良さに拍手でした。
それと宝塚出身の方が結構いらしたのですが、ブレない体幹からのターンのキレ、まあ姿勢の美しいこと。そして、足の裏から出て頭のてっぺんを通って来たようなボリュームなのに、決して叫んでいるようには聞こえない、完璧な腹式呼吸の賜物である澄んだ声の通り具合。
学生時代、中庭や屋上で「あ・え・い・う・え・お・あ・お!」「あめんぼあかいなあいうえお!」と発声練習をしていた演劇部。今ならわかる、あれはものすごーーーく大事な基礎練習。「あの練習の賜物がこの滑舌と通る声か!」と思うと、一瞬でもうるさいなあと思ったことを謝りたい気分です。
休憩を挟んで3時間40分の舞台を1日に2本こなす役者さんもいるようですが、いや、ほんとに舞台は体力勝負ですね。
どうしても言いたいことが
いやーでも最後にどうしても言いたい。
ハリーのネーミングセンス、魔法界のヤンキーか、と。
わかりますよ、恩人や大好きな人たちに敬意を示したいっていう気持ちは。
いやでも、子どもの名前にしなくても。それと、子どものころにたくさんツライ目にあったハリーですから、お子様への距離感に苦しむのはもちろん理解できる。特にダーズリー一家の所業は完全に虐待でしたから。
しかし、厳しくも愛情深く見守ってくれたマクゴナガル先生を半ば権力で脅して子どもたちの監視役にするという暴走っぷりは、なかなかのモンスター。家族の愛情たっぷり受けて育った妻ジニーはかなりまともなのが救い。
藤原竜也ポッターだったら、さらに「蜷川&カイジ成分」が足されてざわざわ猟奇的かもしれないな、などと想像してしまいました(ごめんなさい)。
そういう、親も子も不器用なところがこの物語を良い具合にこじらせるんですけど。好きです。
今演じているキャストたちは2024年6月で卒業してしまう方が多いそうですが、今の所10月分までチケット販売されています。ハリーキャストのスケジュールだけ先まで出ているようです。
興味を持たれた方はぜひ。
楽しいです。